母は二次元に恋をする
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らいだったりみかだったり

Author:らいだったりみかだったり
ドクターストップかかって現在断酒中。
鎖骨がきれいな眼鏡男子が好き(二次元に限る)。
よく勘違いされるが腐ではない。

好きなゲームはFEシリーズ、英雄伝説シリーズとかなんか色々。
最近は主にコミPo!でマンガ作って遊んでます。



コミPo!



閃の軌跡



閃の軌跡Ⅱ



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書けた!!
今回長いです。
公開したSSの中ではおそらく最長。


久しぶりにRPG編ではないほうのBSBです。
が、都合により10年後のお話になっています。

よければどうぞ。
「もう別れる!今度こそ別れる!!」
兄のマンションのリビングの床に座り、笑は声を荒げた。
「また始まった。」
兄、義行はため息をついた。
「だってひどいんだよ!!仕事で毎日終電帰りだし、休日だって仕事か、疲れて寝てるか、一人でバイクでどっかいっちゃうかだし!!」
「このご時世に仕事できるだけありがたいと思えよ。」
義行はあきれた顔で言った。
「それだけじゃない!!もう付き合って10年だよ!?10年間、一度も結婚の話がないんだよ!?」
「これだけキーキーうるせぇ女と結婚生活なんて俺でも嫌だな。」
「ひっどい!!なにそれ!!どういう意味よ!!」
笑は身を乗り出した。
「まあまあ。二人とも落ち着いて。お茶どうぞ。」
兄嫁の弥生がお盆にティーカップと笑が持ってきたケーキを乗せてキッチンから出てきた。
「えみちゃんどうしたの?パパにいじめられたの?」
弥生の足元でフォークを運ぶ長女のゆかりが心配そうな顔をしていた。
「そうなの。ゆかちゃんのパパがひどいのー。」
笑はゆかりを抱きしめた。
「人聞きの悪いこと言うな。」
義行は笑をにらんだ。
弥生は笑いながら笑の前にフレーバーティーを出した。
「頂き物なんだけど、この紅茶いい香りなの。落ち着くよ。」
「ありがとうございます。」
笑は弥生に軽く会釈した。
「パパ!えみちゃんいじめちゃだめ!!」
ゆかりは義行をにらんだ。
「ゆかちゃん。やさしいねー。かわいい!大好き!」
笑はゆかりを両手で抱きしめた。
「ゆかりもえみちゃん大好き!!」
ゆかりも笑に抱きついた。
「あー。はいはい。どうせいつも悪いのはお父さんですよ。」
義行はため息をついた。
すると、ゆかりは慌てて笑から離れ、義行に抱きついた。
「パパ悪くない。パパ大好き!」
ゆかりが言うと、義行は苦笑した。
「はいはい。ありがとう。お父さんも大好きだよ。」
義行はゆかりをひざに抱いた。
弥生はくすくすと笑いながら、ケーキをテーブルに並べた。
そんな様子を、笑はうらやましそうに見つめた。
すると、テレビのそばで遊んでいた次女のさおりがハイハイでテーブルのそばにやってきた。
そして、テーブルにつかまり立ちすると、ケーキに手を伸ばそうとした。
「あっ!さーちゃん、だめ!」
ゆかりは制止しようと身を乗り出した。
「あー。さーちゃんにケーキはまだ早いなー。」
笑は慌ててさおりを抱っこした。
さおりは笑の胸に顔をうずめた。
そんなさおりを笑はいとおしそうに見つめた。
「いいなあ。私も子供ほしい・・・。」
笑はさおりを抱き、つぶやくように言った。

「別に、俺はお前らが別れようがどうでもいいけど、毎年同じこと言ってるじゃねーか。で、結局別れられねーじゃねーか。」
義行は肩をすくめた。
「今回は別れるもん。」
「あー、はいはい。」
「本当だもん!!結婚前提にお付き合いして欲しいって人がいるんだもん!!」
「そんなの今までだって何回もいたじゃねーか。それでも結局別れらんねーままずるずる付き合ってるじゃねーか。」
「で、でも。今回はちゃんと前向きに考えてるもん!!お受けしようと思ってるもん!!」
「無理だな。お前からナオを切ることはできねーよ。」
義行が言うと笑は反論しようとしたが、何も言わずに恨めしそうに義行をにらむと口をつぐんだ。
「義行。そんな言い方しなくてもいいでしょ。」
弥生が義行をなだめた。
「笑ちゃんも、そんな急いで答えだすことないじゃない?尚也くんのこと好きなままでその人と結婚してもただ後悔するだけだと思うよ?」
弥生はやさしく笑に微笑みかけた。
「弥生さん・・・。」
笑は弥生の顔を見た。
そして、顔を歪めるとうつむき、ひざの上のさおりを強く抱きしめた。
「私・・・もう・・・わかんないよ・・・。本当に尚也のこと、好きなのか・・・。」
「笑ちゃん・・・。」
「今までも、何度も考えてきたよ?でもやっぱり尚也が好きって思ってた。でも、もうわかんない。尚也は私のことなんてどうでもいいみたいだし、このまま一緒にいても、時間ばっかり経っていくのかなって思って・・・。」
笑は涙をこらえるようにため息をついた。
「どうしたの?えみちゃん。どっかいたいの?」
ゆかりは笑の顔を覗き込むように身を乗り出した。
笑は慌てて顔を上げると笑顔を作った。
「ん?ううん。なんでもないよ。大丈夫。」
ゆかりは義行のひざから降りると、笑に近づいた。
そして、小さな手で笑の頭をなでた。
すると、ゆかりを真似るようにさおりも笑の頭をぺしぺしと叩いた。
「ははは。二人ともありがとう。」
笑は笑いながら二人を抱きしめた。


「お邪魔しました。」
笑は玄関で会釈した。
「こちらこそ、ケーキご馳走様。」
弥生はさおりを抱っこして微笑んだ。
「急いで結論出さないで。笑ちゃんが後悔しないようにね。」
「はい。ありがとうございます。」
「んじゃ、送ってくる。」
義行は弥生に言った。
「ゆかりもいくー」
ゆかりがぴょんぴょん飛び跳ねた。
「駅まで送るだけだから、ゆかりはお母さんと一緒に待ってなさい。もう外寒いから。」
義行が言うと、ゆかりは目に涙をためて不服そうな顔をした。
そして、潤んだ目で懇願するように笑を見つめた。
「えみちゃん、また来てくれる?」
笑はにっこり笑いかけた。
「うん。ゆかちゃんに会いにくるよ。ケーキ買ってくる。」
「絶対ね?約束ね?」
「うん。約束。」
笑はゆかりの頭をなでた。


「私さ、お兄ちゃんたちのこと、無計画って思ってた。」
ワンボックスの助手席にもたれ、笑はつぶやくように言った。
「就職したばっかりで生活も安定してないのにすぐ結婚して、しかもすぐ子供できちゃって。二人目できたからって駅から遠いし来るのも面倒なくらい辺鄙なところにマンション買って。でもさ、ちゃんと生活できてるし、幸せそうだよね。私たちの方が、よっぽど無計画だよね・・・。」
「悪かったな。俺の収入じゃこんなとこじゃなきゃ買えなかったんだよ。文句があるならいちいちなんかある度に来るなよ。」
義行は運転席で眉間にしわを寄せた。
「悪いとは言ってないでしょ。言葉尻掴んでいじけないでよ。」
「お前はいちいち一言多いんだよ。」
義行は舌打ちした。
笑は深いため息をついた。
「どうなるんだろう・・・。私たち・・・。」
「どうなる、じゃない。どうする、だ。幸せは走って追いかけなきゃ逃げる。人が与えてくれるものだと思っている時点で、お前は幸せを取り逃がしている。」
義行は咎めるように笑に言った。
笑は何も答えなかった。
義行は横目で笑を見たが、それ以上何も言わなかった。



「もうちょっと洒落たワインバーとか、日本酒と焼酎のうまい店とか選択肢はないのか?」
尚也は安居酒屋に入ると、義行に言った。
「ふざけんな。子供二人いて飲みに来るだけでも大変なんだよ。」
義行は舌打ちした。
「奥さんに財布握られちゃってるもんな。」
尚也は笑った。
「俺が財布握ってたらあんなところの中古マンションさえ買えねーよ。」
義行は肩をすくめた。
「すっかり尻に敷かれてんな。いや、尻に敷かれてるのは最初からか。」
「うっせぇ。」
義行は尚也をにらんだ。
二人がテーブル席に向かい合って座ると、店員がお絞りを持ってきた。
「俺は生。」
「俺はウィスキーダブル。ロックで。」
二人はそれぞれ酒といくつかのつまみを頼んだ。
二人の注文を聞くと、店員は厨房に戻っていった。
尚也は義行を見た。
「で、なんだよ。いきなり呼び出して。ゆかりにボーイフレンドでもできたか?」
「ふざけんな。ゆかりはまだ3つだ。」
「いやいや。最近の子はそういうの早いって聞くし?もうお婿さん候補みっけてっかもしんねーぞ?」
「お前な・・・。わかってんだろ。ほんとは。」
義行が言うと、尚也は自嘲気味に笑い、肩をすくめた。
「笑か・・・。またなんか言ってたか?」
「またって、お前な・・・。毎回愚痴聞かされる身にもなれよ。」
「ああ、悪い。」
そのとき、店員が生ビールとウィスキー、お通しを持ってきた。
「お待たせしました。」
二人の前にグラスとお通しが置かれた。
「お疲れ。」
「お疲れ。」
二人は義務のようにグラスを合わせ、それぞれの酒を飲んだ。
義行は生ビールを半分ほど一気に飲むと、ジョッキを置いた。
「大体、俺の呼び出しに応じられるってことは、少しは会う時間取れるんじゃねーか。もうナオは自分のことはどうでもいいみたいだとまで言ってたぞ。」
「まあ、今日はたまたま仕事早く上がれたってのもあるけど・・・。確かに避けてると思われても仕方ねーかもな。」
尚也はため息をついた。
「なんで?」
「なんでってほどのこともない。仕事忙しくて疲れてるときにプレッシャーかけられてうんざりしてるだけだ。」
「まあ、気持ちはわかるけど・・・。」
「ヨシみたいにもっと早く決断してれば違ったのかもしんねーけど。今は責任ある仕事任されて、とにかく仕事が楽しくて、結婚とか子供のこととか考える余裕がないんだ。今の仕事続けてる限り、あんまり家にいられないだろうし。そうなると、子供作るのだって難しい。結局結婚すればしたで寂しい思いさせるだけなんだろうと思う。」
尚也は俯いた。

義行はため息をついた。
そして、目を伏せると、言いにくそうに口を開いた。
「求婚されているそうだ。受けようと思っているらしい。」
尚也は顔を上げた。
「弥生ではなく、俺に言いにきたということは、俺からナオに伝えてくれることをアイツが望んでいるんだろうと思う。お前が、重い腰を上げてくれるんじゃないかと一縷の望みをかけてるんだろう。」
尚也は何も言わず、苦い顔で義行から目をそらした。
「お前らのこと、とやかく言いたくはなかったんだが・・・。」
義行は尚也を見据えた。
「もし、お前が笑と結婚する気がないなら、お前から笑に別れを告げてやってくれないか。」
その言葉に、尚也は目を見張った。
「アイツはお前を切り捨てて他の男を選ぶことができるほど強くない。でも、アイツはしたたかな女だ。自分を切った男にまで情をかけることはない。もし、少しでもアイツをかわいそうだと思ってくれるなら、お前からアイツを切り捨ててやってくれ。」
「・・・・。」
尚也は俯いた。
その表情は迷っているようだった。
「すぐに、とは言わない。10年付き合って、結婚するのも別れるのも踏ん切りがつかないのもわかる。ただ、今のお前を見る限り、そろそろ潮時なんじゃないかと思うんだ。」
義行は重い表情で言った。
尚也は何も答えなかった。
ただ、うつむいたまま考え込むようにグラスを見つめていた。

しばしの沈黙が続いた。
義行もまた、何も言わずに運ばれてきたつまみを口に運んでいた。
そのとき、何か思いついたように尚也口を開いた。
「なあ、ヨシはさ、弥生っちにプロポーズしたとき、幸せにする自信、あったか?」
義行は顔を上げ、鼻で笑った。
「あると思うか?」
尚也は首を横に振ると笑った。
「いや。」
「なかったさ。もちろん。」
義行は肩をすくめ、小さく笑った。
「じゃあ、なんでプロポーズしたんだよ。」
「コイツと結婚したいと思ったから。」
「それだけで出来るもんじゃないだろ。」
尚也は呆れたように言った。
「幸せにできる自信はなかったけど、アイツ以外と一緒になって自分が幸せになれるとも思えなかった。他の奴に取られる前に結婚しなきゃと思った。」
義行の答えに尚也は苦笑した。
「お前は迷わないよな。昔から。それで失敗しねーんだからすげーって思うよ。」
「迷うから失敗するんだ。迷うなら、それは違う。」
「そんなもんか。」
「そんなもんだろ。」
「俺と笑は、ちがうんかな。」
「長く一緒にいすぎたんだろ。時間がありすぎると、迷う余裕ができる。」
「そう、なんだろうな。」
尚也はため息をついた。

二人はその後その件には触れず、お互いの仕事や近況などを話した。
酒もあまり進まず、二人は酔えないままに店を出た。



「おかえりなさい。」
義行が家のドアを開けると、パジャマ姿の弥生がリビングから出てきた。
「まだ起きてたのか。寝ててよかったのに。」
義行は靴を脱ぎ、家に上がった。
「うん。もう少ししたら寝るよ。」
「二人は?」
「寝てるよ。」
「そりゃそうだな。ちょっと顔だけでも見てくる。」
「起こさないでね。」
「わかってる。」
義行は寝室に向かった。
寝室のドアを開けたまま、廊下の明かりだけを頼りに娘たちの寝顔を見るのが義行の日課だった。
二人は寄り添って眠っていた。

結婚に迷いはなかった。
だが、子供を生ませることに迷いがなかったと言えば嘘になる。
不意に授かった小さな命。
養っていく自信も、育てていける自信も本当はなかった。

「迷うなら違う、なんてえらそうなこと言って、一番大事なことを迷ってたじゃないか、な。」
義行は二人のやわらかい頬をなでた。
娘たちは小さな寝息を立てている。

思えば、二人の起きている顔など、一体どれくらい見られただろうか。
さおりなど、気がついたら伝い歩きをしていた。
帰ってくると、笑顔で迎えてくれる弥生。
その笑顔に安心して、何もかも任せきりにしていた。


一緒にいられる時間が作れないから、結婚しない尚也。
一緒にいられる時間が作れないから、結婚した自分。
どちらが正しいのか、義行にはわからなかった。


「おやすみ。」
二人の寝顔に小さくつぶやき、義行は寝室を出ると、静かにドアを閉めた。




「久しぶりだね。ここにくるの。」
秋風が笑の髪を揺らした。
尚也は考え込むように笑の後姿を見つめた。
「・・・10年前、だったな。」
笑は小さく笑った。
「うん。たしか私、お兄ちゃんの友達に振られたんだっけ。尚也に慰めてもらったよね。バイクでここに連れてきてもらった。」
「ああ、そうだったな。」
二人は並んで海辺を歩いた。
人気のない海辺には、ただ波の音が響いていた。
「あのころ、色んなこと考えていたような気がするのに、今となっては、全然思い出せないんだ。」
尚也は水平線を見つめ、つぶやくように言った。
「そうだね。私もそうだよ。あのころの当たり前が、今はもう当たり前じゃない。」
笑は寂しそうに笑った。

尚也は思いつめた顔で口を開いた。
「色々、考えた。」
「・・・・うん。」
「どうするのが、俺たちにとって一番いいのか。」
「・・・・うん。」
「待っててくれと言うのは簡単だと思う。でも、いつまでと約束もできない。」
笑は立ち止まると尚也の顔を見つめた。
尚也は笑の顔を直視することができず、うつむいた。
「・・・・ごめん。」
尚也はうつむいたまま苦い顔で言った。
「俺は、俺には・・・ヨシと同じようには、どうしてもできない。」
「・・・・・。」
「結婚しても、このままいても、結局は笑を一人にしてしまうことになると思う。」
「・・・うん。」
笑はわかっているというようにうなずいた。
「今まで、ずっと、ごめんな。」
「・・・・ううん。」
笑は小さく首を振った。
「私の方こそ、今までずっとわがままばっかりで、ごめんね。」
笑は微笑んだ。

笑は尚也から一歩離れた。
「今までありがとう。楽しかった。」
「ああ。俺も。」
尚也は笑を見つめると微笑んだ。
「じゃあ。私、先帰るね。」
「え?あ、送ってく・・・。」
尚也がそういうと、笑は笑った。
「やだなあ。またそうやって子ども扱いして。電車あるし、一人で帰れるよ。」
「・・・・そっか。ごめんな。」
尚也は寂しそうに苦笑した。
「うん。じゃあ、さよなら。なおにい。」
笑はそう言うと、踵を返し、来た方向に歩き始めた。
遠ざかっていく笑の後姿を、尚也はただ見つめていた。


なおにい。

そういえば、10年前まではそんな風に呼ばれていたんだった。
そんなことも忘れていた。


小さいころから想っていた。
かっこつけて兄貴風を吹かせていた。
兄貴としてでも側にいたかった。
ずっと守ってやりたかった。

この気持ちは、永遠に続くものだと思っていた。


「こんなに一緒にいたのに、涙も出ないもんなんだな。」
誰に言うでもなく、尚也はつぶやいた。




「具合でも悪いんですか?」
上司の長い小言から解放され、ぐったりと肩を落とし自席に着いた尚也に職場の後輩が声をかけた。
「え?いや。」
尚也は顔を上げた。
「士奈さん、ここんとこがんばりすぎじゃないですか?少しは休まないとマジで倒れますよ?」
後輩は心配そうに言った。
尚也は苦笑すると、首を振った。
「いや、休める状況じゃないし・・・。」
そう言いかけたところで、その後に続く言葉を飲み込んだ。


仕事していた方が余計なこと考えなくて済む


寝付けない夜が続いていた。
その時間を仕事に費やしたところで仕事の効率が上がるわけでもない。
むしろ、今までの自分からは考えられないような小さなミスが続いていた。
胃がギリギリと痛むのは、深酒のせいだけではなかった。


ほんのちょっと前まで、鬱陶しくて仕方なかった。
何かと理由をつけて避けていた。
なんて勝手なのだろう。

尚也は自嘲気味に笑った。


笑という存在が自分の気持ちを安定させてくれていた。
自分が支えていたつもりで、実際には支えてもらっていた。
今更気づいてももう遅いのに。




休日出勤でいつもより少し早めに帰路に着いた尚也は、家までの道のりで見慣れた後姿を見つけた。

笑だった。

だが、その隣には、見覚えのない男の姿があった。
見た目は地味だが、大柄でやさしそうな男だった。

笑はやわらかい笑顔で微笑んでいた。
決して似合いのカップルには見えなかったが、やわらかい空間が二人を包んでいることは見て取れた。


別れる直前、笑のあんな笑顔を見ただろうか。
思えば笑はもともとよく笑う子だった。
いつからだろう。
笑が自分の前で笑わなくなったのは。

尚也の胃はまた痛み出した。



笑は家の前で男に会釈した。
男は微笑むと、駅の方向に歩きだした。
笑はそれを見送っていた。
尚也は慌てて物陰に隠れた。
男は尚也に気づかなかったらしく、そのまま歩いて行ってしまった。
尚也は笑の方を見た。
笑は家の門を開け、中に入ろうとしていた。

「笑。」
尚也は笑に近づくと、声をかけた。
笑はびっくりして振り返った。
「あ・・・・。」
笑は声を漏らすと一瞬悲しそうな顔をして目を伏せた。
だが、すぐに顔を上げ、微笑んだ。
「お仕事?」
「ああ。」
「そっか。大変だね。休みの日まで。」
「ああ。・・・・彼氏?」
「え?」
「さっきの・・・・。」
「ああ。まあ・・・・。」
笑は困ったような表情で曖昧に答えた。
そして、何を言えばいいのかわからない様子で、そのまま黙ってしまった。

少しの沈黙の後、笑は引きつった笑顔を尚也に向けた。
「あ、あの。じゃあね。」
今の笑が尚也に向けることができる、精一杯の笑顔と言葉であることは明らかだった。
「あ、ああ。」
尚也もまた、引きつった笑顔を浮かべた。
笑は尚也から離れ、家のドアに手をかけた。
尚也はとっさに笑に駆け寄り、笑の腕をつかんだ。
笑はおびえたような顔で振り返った。
「ど、どうしたの?」
尚也はそのまま固まってしまった。
「あ・・・・いや・・・・。」
自分でもどうしてそんなことをしたのかわからなかった。
尚也はかける言葉を必死で探した。
だが、何を言っていいのかわからず、そのままうつむいてしまった。
「あの・・・。帰らないと、お父さんがうるさいから・・・。」
笑は尚也に訴えた。
「ああ、そうだな。ごめん・・・。」
そういいつつも、尚也は笑の腕を離すことができなかった。
「あの・・・。なおにい・・・。」
笑は困った顔をしていた。
「兄貴じゃないって言っただろ!!」
尚也はとっさに声を荒げた。
笑はびくっと肩を震わせた。
「あ・・・。」
尚也は手で口を覆った。
「ごめ・・・・。」
尚也は謝ろうとしたが、笑はみるみる顔を歪めた。
「じゃあ・・・じゃあ、なんて呼べばいいの!?」
笑の目から涙があふれ出した。
「呼んで欲しくないなら、話しかけないでよ!!私のことはもう放っておいてよ!!」
ぼろぼろと涙を流しながら、笑は叫んだ。
そして、尚也の腕を振り払おうと腕に力を入れた。
だが、尚也はいっそう笑の腕をつかむ手に力を入れた。
「離して!離してよ!!」
笑は必死で尚也の手から腕を抜こうとした。


ふと、尚也の脳裏に義行の言葉がよぎった。


『幸せにできる自信はなかったけど、アイツ以外と一緒になって自分が幸せになれるとも思えなかった。』


幸せにするのが男の義務だと勝手に思っていた。
でもそうじゃない。
一緒に幸せにならなきゃ意味がないんだ。


尚也は、笑の腕を引き寄せ、力いっぱい抱きしめた。
笑は逃げようと暴れた。
「やめてよ!離してよ!」
暴れる笑を尚也は無理やり押さえつけた。
そして、泣き叫ぶ笑の口を無理やりふさぐように、強引に唇を重ねた。
笑は尚也の腕から逃げようともがいていたが、次第に暴れるのをやめた。

尚也が唇を離すと、笑はまっすぐに尚也の目を見つめた。
その目からは絶えず涙があふれていた。
「どうして・・・どうして・・・。」
笑は尚也の胸にすがりつき、嗚咽を漏らした。
尚也は笑の細い肩をしっかりと抱きしめた。



離れていく恋人に追いすがるなんてかっこ悪いことだと思っていた。
でも、今ここで笑を離してしまったら、きっとこの先自分が幸せになることはありえない。

「もう遅いかもしれないけど、どうか聞いてくれ。」
尚也は笑の耳元で、ささやくように、だが、はっきりとした言葉で語りかけた。
「幸せにするとはまだ言えない。いつ言えるかもまだわからない。でも、いつかきっと幸せにするから。だから、今、俺が幸せになるために。」




「俺と、結婚してください。」




「えみちゃんきれー!おひめさまだー!!」
新婦控え室に入ると、ゆかりは目を輝かせた。
「ありがとう。ゆかちゃんもさーちゃんもかわいいよ。」
ウェディングドレスに身を包んだ笑は微笑んだ。
ゆかりはうらやましそうな顔で、笑の周りをうろうろしていた。
弥生に抱かれていたさおりが笑に手を伸ばした。
「だめ。今日は笑ちゃんはだっこできないの。」
弥生はさおりをしっかりと抱きなおした。
「ゆかりも、ドレス汚れちゃうから触っちゃダメだよ。」
弥生が言うと、ゆかりは不服そうな顔で「はあい」と返事をした。
「おめでとう。笑ちゃん。すごくきれいだよ。」
弥生は少し目を潤ませ、微笑んだ。
「ありがとう。弥生さん。」
笑もうれしそうに微笑んだ。
「幸せになってね。笑ちゃんが幸せになってくれないと、義行がグチグチうるさいから。」
弥生が言うと、笑は笑った。
「悪かったな。」
義行は弥生を軽くにらんだ。
「まあ、でも、よかったな。おめでとう。」
「うん。ありがとう。」
笑は義行の顔を見ると、目を潤ませた。
「本当に、ありがとう。お兄ちゃん。今までずっと。」
笑は目に涙を浮かべ、声を震わせて言った。
それを見た義行は意地悪く笑った。
「今まで、ってことは今後は面倒かけないでくれるってことなのか?」
「もう!お兄ちゃん!」
笑は義行をにらむと笑った。
弥生は笑にハンカチを渡した。
「ほら。泣くのはまだ早いよ。お化粧落ちちゃう。」
「あ、そうですね。すいません。」
笑は弥生からハンカチを受け取ると、目頭を軽く押さえた。
「んじゃ。俺たちは親族控え室行ってるから。」
「うん。わかった。」
「えみちゃん、またね。」
ゆかりが手を振った。
「うん。後でね。」
笑もゆかりに手を振った。
さおりもそれを真似るように、弥生の腕の中で手をぱたぱたと振った。
義行は控え室のドアを開け、弥生とゆかりを促すと、笑の方に振り返った。
「笑。」
「ん?」
「幸せにしてもらえよ。」
義行がそう言うと、笑は笑って言った。
「違うよ。お兄ちゃん。私が尚也を幸せにしてあげるんだよ。」
それを聞いた義行は小さく笑った。
「ああ。そうか。そうだな。・・・・じゃあ、幸せにしてやれよ。」
義行は笑がうなずくのを確認すると、安心したようにドアを閉めた。


「泣いてもいいんだよ?」
廊下に出ると、弥生は義行の顔を覗き込んだ。
「泣かねーよ。」
義行は苦笑した。
「無理しちゃって。」
「無理なんてしてねーよ。っつーか、どっちかっつったらほっとした。」
「そうなの?」
弥生は意外そうな顔をした。
「ああ。やっぱさ、なんだかんだ言っても笑はナオと一緒になるのが一番いいと思うから。」
義行がそう言うと、弥生はつまらなそうな顔をした。
「この日をずっと楽しみにしてたのに。これじゃなんのために結婚したのか・・・。」
「それだけのために結婚したのかよ!!」
義行が声を荒げると、弥生はいたずらっぽく笑った。
義行はため息をついた。
「正直、自分でも泣くかなって思ってたんだ。でも、思ったより平気だった。俺には、弥生も、ゆかりもさおりもいるから。」
「そっか。成長したね。」
「そうかな。じゃあ、きっと弥生のおかげだな。」
義行はそう言って笑うと、弥生の顔を見た。
「・・・あのさ。」
「うん?」
「・・・今更だけど、ゆかりとさおり、生んでくれてありがとうな。」
弥生は小さく笑った。
「別に義行のために生んだわけじゃないし。」
「それは、そうかもしれないけど・・・。」
義行は困った顔をした。
その顔を見た弥生は満足そうに微笑んだ。
「まあ、でも、どういたしまして。」
義行はその笑顔を見てほっとした顔をすると、弥生の頭を抱き寄せた。


「パパ。」
ゆかりが義行の顔を見上げた。
義行はゆかりの顔を見た。
「なに?」
「えみちゃん、なおくんのおよめさんになるの?」
「そうだよ。」
義行が答えると、ゆかりはうつむいた。
「どうした?」
義行はゆかりの顔を覗き込んだ。
ゆかりはしょんぼりとした顔をしていた。
義行はゆかりを抱き上げた。
「笑ちゃんが結婚するのが寂しいの?」
弥生がゆかりの顔を覗き込んで聞くと、ゆかりは小さく首を振った。
「じゃあ、どうしたんだ?おなかすいたか?それとも具合でも悪いのか?」
義行が聞くと、ゆかりは顔を歪めた。
「だって、だって。なおくん、おおきくなったらゆかりのことおよめさんにしてくれるっていったのに・・・。」
ゆかりは悲しそうに言った。
義行は笑った。
「そうか。それは残念だったな。」
だがそう言った直後、義行の表情は固まった。
「・・・・・なんだと?」
義行は奥歯を強く噛むと、険しい顔をした。
そして、ゆかりを下に下ろし、わなわなと震える拳を思い切り握り締めた。
「あの野郎・・・。今日という今日はぜってぇ許さん!体中の骨という骨粉砕してやる!!」
義行はそう言うと、険しい顔のまま新郎控え室に向かった。
弥生は肩をすくめた。
「まったく。全然成長してないじゃない。」
ゆかりは泣きそうな顔で弥生を見た。
「パパ怒ってた。ゆかり、悪いことした?」
弥生はゆかりの顔を見て笑った。
「気にしなくていいのよ。いつものことだから。」
弥生はそう言ってゆかりの手をやさしく握り、苦笑しながら義行の後姿を見送った。

-おわり-


駄文にお付き合いいただきありがとうございます。


なんでいきなりこんな話かっつーと、まあ、
誰かさんが婚約しやがりまして。
なんつーか、まあ、その記念に書いてみたわけですよ。
ええ。


義行と尚也がそれぞれどんな形で結婚するかって話は、まあちょこちょこ考えたり、話したりしてはいたんですよ。
同じタイミングで一緒に結婚して二世帯住宅で、なんて夢みたいな話もしていたんですが、まあまずないなと思いまして。

自分が現在どう動けば一番効率がいいかしか考えていない義行に対し、尚也は非常にロマンチストです。
だから、確固とした未来設計なしにプロポーズすることができない。
変に考えすぎてしまって二の足を踏む。
また、笑も笑で、我が強い割には引っ張って欲しいってタイプ。
一緒に一歩を踏み出せる二人じゃないんじゃないかなーと思います。
最初にこの二人がくっつく話を書いたときから「この二人はくっついたり離れたりを繰り返すだろう」と言われていたし。
そんなわけで一回別れてより戻すっていう形にしてみました。

あとは『Nickelback someday 和訳』でggr。


まあ、そんなわけで。
こっから私信。

三十路女のいじめは陰湿だぞ?
旦那フルボッコにされたくなかったら幸せになれよ。
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コメント
No title
お友達さん、ご婚約、おめでとうございます!!

それにちなんでのSS、最後にはジーンとしながら読ませていただきました!
笑ちゃんとナオくんのカップルは、ずーっとこんな感じなのでしょうか(苦笑)
笑ちゃんは、可愛い笑顔の似合うお嫁さんでいて欲しいですねー!
ヨシくん達のほんわかとした幸せそうな家庭も垣間見れて♪
素敵なお話をありがとうございました!
[2010/11/13 11:17] URL | みぃ #- [ 編集 ]

>みぃさん
お読みいただきありがとうございます。
この4人の話に最終回があるとしたら、こんな感じかなと思って書いてみました。

義行んとこはわかりやすいほどに義行が弥生の尻に敷かれますが、尚也と笑は多分そうはいかない。
そういう役割分担みたいな付き合い方はできないと思います。
なので、今後も反発しながらやっていくんでしょうね。
多分。
でも、お互い付き合いは長いので、相手の転がし方は熟知していると思うからなんだかんだでうまくやっていけるのではないでしょうか。
[2010/11/13 15:47] URL | みか #- [ 編集 ]

書かれた!
オレ、幸せになるよ。
ていうか、あいつのこと、幸せにするよ!

嬉し恥ずかしなプレゼントをありがとう!
さて、この尚也はなんの仕事をする人ぞ?

結婚式、どんなのになるかまだまだ試行錯誤中です。
パーティはみんなが楽しめるものになるように、
現在根回し中なので、いろいろ決まったらお知らせするよ。
[2010/11/15 00:58] URL | ショウ #CGSys/Bo [ 編集 ]

>ショウちゃん
読んでくれてありがとう。
もちろんだ。
幸せになれよ!!

尚也はなんだろうねえ。
やっぱ印刷会社に勤めてんじゃない?
ちなみに義行はシステム。
二人とも命削って働いてるwww

一生に一度だし、思いっきりやりたいって気持ちもわかるけど、人生設計と体調に支障がないようにねー。
あと作って欲しいものとかあったら言ってねー。
手芸と料理ならやるよ。
ああ、あと、日曜大工とかもできる。
作って作れないものはあんまないと思う。
宇宙を創造しろとか言われたら無理だけど。
[2010/11/15 07:59] URL | みか #- [ 編集 ]


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